なるほど豆知識
2017.9 vol.52 大丈夫ですか?ヒートショック対策
ヒートショックとは?
急激な温度変化が体に及ぼす影響のことです。室温の変化によって、血圧が急激に上昇したり下降したり、脈拍が早くなったりする状態のことをいいます。 |
厚生労働省の研究班の調査では、救急車で運ばれた患者数から推計した入浴中の事故死の数は年間約1万9000人とされています。この数は交通事故による死亡者数の4倍以上です。入浴中の事故死は、冬季に多く、12月から2月にかけて全体の約5割が発生しています。また、入浴中の事故はほとんどが浴槽内で起きており、熱い湯に肩までつかるという日本固有の入浴スタイルが影響していると考えられています。
ヒートショックが起きやすい場所は、脱衣所・浴室・トイレなどが群を抜いていて、ほかにも廊下や玄関、納戸やガレージなどといった場所も危険度があると言っていいでしょう。
65歳以上の方がなりやすい!
〇高血圧や糖尿病の人 〇動脈硬化のある人
〇呼吸に問題がある人 〇不整脈がある人
〇肥満気味の人
〇睡眠時無呼吸症候群のような呼吸に問題がある人
〇自宅の浴室に暖房設備がない
〇一番風呂に入ることが多い
〇熱いお風呂が好き
〇飲酒をしてからお風呂に入ることがある
厚生労働省の人口動態統計による家庭の浴槽での溺死者数は、平成26年に4,866人で、平成16年と比較し10年間で約1.7倍に増加しました。このうち約9割が65歳以上の高齢者で、特に75歳以上の年齢層で増加しています。
高齢者は血管がもろくなっているうえ、血圧の上昇幅が大きく、脳出血などを起こしやすくなります。ヒートショックは、高齢者の人が家庭内で死亡する原因の4分の1を占めているのです。性別でみた場合は、入浴中に起こる事故の件数は男性の方が多いのですが、死亡に至ってしまうのは女性の方が多くなっています。高齢者になるほどその割合も高くなっています。これは、皮下脂肪などの脂肪量が多い女性の方が、体温調節がうまくいかなくなってしまっているのが原因ではないかと言われています。
入浴時を例にとって、確認してみましょう!
寒い脱衣場や浴室に入る→血管が収縮し血圧上昇
浴槽につかる→体が温まることで血管の拡張と循環血液が改善され、血圧が急激に降下
風呂から上がり寒い脱衣場へ→血管が収縮し血圧は上昇
服を着る→服を着ることで体温が保たれるので血圧は下降
健康な人にとっては、何でもないことのようですが、高齢者や高血圧の人にはこの血圧の変化は、想像以上に体に負担がかかってしまいます。
温度変化により急激に血圧が上下することで、血管にダメージを与え、心筋梗塞や脳梗塞などの発作を起こす可能性があります。
心筋梗塞も脳梗塞も、どちらも血管がつまってしまう病気です。
心臓の血管がつまれば…心筋梗塞
脳の血管がつまれば…脳梗塞になります。
どちらの場合も、血管がつまってしまうと、その先で酸素や栄養分の到着を待ちわびている細胞たちは、それ以上生き長らえることが出来なくなってしまいます。
▲▼お風呂での予防▲▼
①寒い時期は、脱衣室と浴室を十分に暖かくしておく!
脱衣所が寒い場合は、暖房器具などを置くだけでも、かなりの効果があります。シャワーで高い位置から浴槽にお湯を溜めることで、浴室内全体を早く温めることができます。シャワー給湯をすることによって、浴室温度が15分間で10度上昇すると言われています。シャワーの蒸気が浴室の温度を、効率よく上昇してくれます。
②38~40度くらいのお風呂に入りましょう!
入浴温度42~43度の熱い湯は、心臓にかなりの負担がかかるので、とても危険です。38~40度くらいのお風呂に入るようにしましょう。入浴温度41度以上になると、浴室事故での死亡者が増加する傾向にあります。
③入浴前後にコップ一杯の水分を補給しましょう!
入浴による発汗で体内の水分が失われてしまうのを防ぐために、入浴前後には水分を補給するようにしましょう。体に吸収されやすいイオン飲料も効果的です。体内の水分が失われると、血液がドロドロになってしまい、心筋梗塞や脳梗塞を起こしやすくなります。
④入浴は食事後1時間以上たってから!
食事をしたすぐ後は、血液が消化器官に集まるため血圧が下がりやすくなっているので、入浴は食事後1時間以上たってからにします。
⑤入浴前に降圧剤やアルコールは飲まないようにしましょう!
アルコールには血管を拡張する働きがあるので一時的に血圧を低下させます。降圧剤も血圧を下げる働きをしますので入浴前には避けたいものです。
⑥まずはかかり湯!
浴室に入ったらいきなり湯船に入るのではなく、かかり湯をしましょう。まず手や足などの心臓に遠いところからかけ湯をして十分に身体をお湯に慣れさせましょう。かかり湯をせずにいきなり湯船につかってしまうと、心臓にかかる負担も大きくなります。
⑦全身浴よりも半身浴にする!
一般的な浴槽で体が受ける水圧は80キロあるとも言われ、高血圧や高齢者、心臓の弱い人の体には、全身浴はかなりの負担がかかっています。かけ湯や半身浴を組み合わせるなど、入浴方法を工夫しましょう。
▲▼トイレでの予防▲▼
①小型の暖房機を置く
夜間のトイレはかなり冷え込むので、小型の暖房機などを置いてトイレを暖かくする工夫をしましょう。
②トイレに近い部屋を寝室にする
夜間何度もトイレに起きる高齢者やヒートショックになりやすい人は、できるだけトイレに近い部屋で就寝できるように配慮をしてあげましょう。
③トイレに窓がある場合にはカーテンを!
日本の住宅は北側にトイレのある家が多いので、窓にカーテンを取り付けるだけでも断熱効果は1.5倍にアップします。
④いきみすぎにも気を付けましょう!
排便の際にいきみすぎると、血圧や心拍数が上昇して心臓への負担が大きくなる原因になるので気を付けましょう。便秘もいきみすぎの原因になるので、水分や食物繊維を多く含む食品を積極的に食べるようにしましょう。
ヒートショック対策【最低室温17℃+最大温度差3~5℃】
多くの実験の結果、ヒートショックを防ぐ冬の平均温度差は【3℃から5℃以内】であることが望ましいといわれており、国土交通省でも、
・暖房居室と非暖房居室の”温度差”は【5℃以内】
・廊下とトイレの”温度差”は【3℃以内】
であることを、推奨しています。
また、廊下や浴室・トイレなど非居室で17℃を安心レベルとしています。
消費者庁:冬場に多発する高齢者の入浴中の事故 News Release より