なるほど豆知識
2017.12 vol.55 おせち料理を知ろう!
おせち料理とは | |
年神様に供えるための供物料理です。もともとは、季節の節目に行う節供の料理を「御節供」「御節料理」といい、やがて正月だけをさすようになりました。かまどの神様を休めるため作りおきできるものが中心で、家族の繁栄を願う縁起物が多く、めでたさが重なるよう重箱に詰めます。 |
おせち料理の由来
平安時代、宮中で元旦や五節供などの大切な節日を祝うため、神様にお供えした食べ物を「御節供(おせちく)」といいました。本来、おせち料理はお正月だけのものではありませんでしたが、江戸時代に一般大衆に広がると、節日の中で正月が最も重要だったため、「おせち料理」といえば正月の料理をさすようになりました。お正月は、五穀豊穣を司る年神様をお迎えし、新年の幸福を授けていただく行事です。そしておせち料理は年神様に供える縁起ものの料理ですから、五穀豊穣、家族の安全と健康、子孫繁栄の祈りを込めた、海の幸、山の幸を豊富に盛り込みます。
もともとは収穫物の報告や感謝の意をこめ、その土地でとれたものをお供えしていましたが、暮らしや食文化が豊かになるに従って山海の幸を盛り込んだご馳走となり、現在のおせちの原形ができました。
重詰の由来
重詰めのおせち料理が食卓に並ぶと、お正月気分も一気に盛り上がりますが、どうして重箱を使うのでしょうか。それにはこんな理由があるようです。
・重箱を重ねることが「福を重ねる」「めでたさが重なる」という意味につながる ・昔は祝い肴を「喰積(くいつみ)」と呼び、重詰めにしていたことに由来 ・年賀に来るお客様にも振る舞いやすい |
また、正月3が日はおせち料理を食べることが通例で、保存が利くように重箱に詰めておくのが一般的でした。
正式な重詰めは四段重ですが、五段重という場合もあります。その場合1段目から4段目までは料理を入れ、5段目は年神様から授かった福を詰める場所として空っぽにしておきます。
各段ごとに詰める内容が異なり、各段の料理の数は、5種・7種・9種の吉数で詰めると縁起が良いとされています。
おせち料理のいわれ
おせち料理には、たくさんの料理があります。栄養バランスや保存性のよさなど、まさに先人の知恵の結晶といえますが、重箱に詰めるときは、段ごとに詰める内容が決まっています。その基本を踏まえておけば、重詰めだけでなく、皿盛りにする場合にも参考にできます。
壱の重【口取り・祝い肴】 |
重ねた時に1番上になる壱の重には、正月にふさわしい祝い肴を詰めます。中でも、数の子・田作り・黒豆を「三つ肴」といい、正月には欠かせないものとされています。関西では、黒豆ではなくたたきごぼうを加えた、数の子・田作り・たたきごぼうが三つ肴です。そして、それぞれの食材には、人々の願いが込められています。
『数の子』・・子宝に恵まれ、子孫繁栄。ニシンの子なので「二親健在」にも通じる。
『田作り』・・イワシが畑の肥料だったことから「田作り」「五万米(ごまめ)」と呼ばれ、農作祈願の料理。また、小さくても尾頭付き。
『黒豆』・・まめに(勤勉に)働き、まめに(丈夫で元気に)暮らせるように。
『たたきごぼう』・・ごぼうのように根を深く張り代々続く。たたいて身を開き開運を願う。
三つ肴の他に、お正月ならではのおめでたい料理が入ります。
『紅白かまぼこ』・・半円形は日の出(年神様)を表す。おめでたい紅白で、紅は魔除けの意味があり、白は清浄を表す。
『伊達巻』・・昔の伊達者(シャレ者)たちの着物に似ていたので伊達巻と呼ばれるようになったといわれる。「伊達」とは華やかという意味がある。巻き物が書物や掛軸に通じることから知識や文化の発達を願う。
『昆布巻』・・「喜ぶ」にかけて
『栗きんとん』・・栗は「勝ち栗」と呼ばれる縁起もの。「金団」と書き、黄金色で縁起がよく蓄財につながる。
『ちょろぎ』・・「長老喜」「千世呂木」と書き、長寿を願う。
『錦玉子』・・黄身と白身の2色が金と銀にたとえられる。2色を錦と語呂合わせしているとも。 |
弐の重【焼き物】 |
縁起のいい海の幸が中心です。
『ぶり』・・ぶりは大きさによって名前が変わる出世魚。ぶりで立身出世を願う。
『鯛』・・「めでたい」にかけて。姿もよく味もよい鯛は、江戸時代から「人は武士、柱は檜(ひ)の木、魚は鯛」といわれ、めでたい魚として祝膳には欠かせないもの。
『海老』・・腰が曲がるまで長生きできるように。 |
参の重【煮物】 |
山の幸を中心に、家族が仲良く結ばれるよう煮しめます。
『れんこん』・・穴があいていることから、将来の見通しがきくように。
『里芋』・・子芋がたくさんつくことから、子孫繁栄。
『八つ頭』・・頭となって出世をするように、子芋がたくさんつくので子孫繁栄。
『くわい』・・大きな芽が出て「めでたい」、子球がたくさんつくので子孫繁栄。
『ごぼう』・・根を深く張り代々続く。 |
与の重【酢の物・和えもの】 |
忌み数字の「四」は使わず、「与の重」とします。日持ちのする酢の物などを詰めます。三段重の場合は、酢の物も焼き物などと一緒に、彩りよく詰めるとよいでしょう。
『紅白なます』・・紅白めでたく、祝いの水引にも通じる。根菜のように根を張るように。
『菊花かぶ』・・菊は邪気を祓いと不老長寿の象徴。
『小肌粟漬け』・・小肌はコノシロという魚の成魚になる前の名前。出世魚で縁起がよい。クチナシで黄色く染めた粟で、五穀豊穣を願う。 |
五の重【控えの重】 |
年神様から授かった福を詰める場所として空っぽにしておくか、家族の好物や予備の料理などを入れます。 |
今のように冷蔵庫がなかった時代、本来のおせち料理は、保存がきくお料理がほとんどです。日持ちがするという理由以外にも、年神様に静かに過ごしていただくためや、台所で騒がしくしないという心配りも含まれていました。また、かまどの神様に休んでいただくためや、神聖な火を使うのを慎むためともいわれています。そして、年末年始、多忙な女性が少しでも休めるようにという配慮もあったかも知れません。
現代のおせちは、家族の好みのものを中心に、洋風や中華風の料理が入ったり、サラダのような生野菜が加わったりと、とても多彩になりましたが、先人のこうした知恵と心を大切にしながら、素敵な正月を迎えたいものです。