なるほど豆知識
2020.4 vol.71 日本のビールを楽しもう!
日本に初めてのビール
日本のビールの歴史をたどると、江戸時代までさかのぼります。当時の日本は鎖国の時代、他の西洋文化と同様に、ビールも海外に向けて唯一開かれていた長崎の出島を通じでもたらされましたが、国内に広く浸透するには、多くの時間を要しました。初めてビールを口にした日本人として記録に残っているのは、玉虫左太夫(タマムシ サダユウ)という幕末の仙台藩士です。彼は万延元年(1860年)にアメリカへの使節団として派遣されたメンバーの一員で、太平洋を航海中にビールを飲み、「苦味なれども口を湿すに足る」と評価しています。
開国によって鎖国制度が終焉を迎えるとともに、日本に西洋文化が導入されるようになりました。ビールが本格的に普及し始めたのも、幕末から明治にかけてのことです。とくに明治以降は“文明開化”と呼ばれるように、様々な西洋文化とともにビールをはじめとした洋食文化も急速に浸透し、日本国民のライフスタイルも一変しました。
日本初のビール醸造所
日本で初めてビールの醸造を行ったのは、幕末の蘭学者、川本幸民といわれています。
ビール醸造所として初めて設立されたのは、明治2年(1869年)に横浜の外国人居留地に開業した「ジャパン・ブルワリー」。その後、横浜をはじめとした様々な場所でビール醸造所が続々と設立されることになります。
ビール醸造所の多くは外国人によって作られたものでしたが、明治5年(1872年)には、渋谷正三郎氏によって日本人が経営する初のビール会社「渋谷(シブタニ)ビール」が設立されました。
「エール」と「ラガー」
ビールづくりにおける発酵は、「上面発酵」「下面発酵」「自然発酵」の3種類に分類することができます。私たちが飲んでいるビールのほとんどは、「上面発酵」「下面発酵」のどちらかで作られています。
「上面発酵」…古くからのビールの造り方。
酵母が麦汁の表面に浮き上がっていくのでそう呼ばれる。 常温~やや高温で発酵し、発酵期間は3~4日。 (その後の熟成期間は、約2週間) |
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「下面発酵」…中世以降に始まった造り方。
酵母がタンクの底に沈んでいくのでそう呼ばれる。 5℃前後の低温で発酵し、発酵期間は7~10日。 (熟成期間は、約1ヶ月) |
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「自然発酵」…培養されていない野生酵母を使った造り方。
今では数多くは造られていない。代表的なものはベルギーの 「ランビック」という種類のビール。 |
そして、上面発酵で作られるビールを「エール」
下面発酵で作られるビールを「ラガー」といいます。
エールの方が歴史は古いのですが、ラガーは中世以降に始まり、19世紀以降、世界的に主流となりました。ラガーは低温で発酵が行われるため、雑菌が繁殖しにくく製造管理がしやすいといったメリットがあり、一定の品質を保ったビールを大量生産するのに向いていたからです。
ビールは何からできている?
ビールは主に4つの原料からできています。
発芽させた大麦のこと。 |
ハーブの一種で、 ビールの苦みや香りをつける。 |
簡単にいうと、生きている菌類。糖質をアルコールと炭酸ガスに分解して分裂、生長します。 |
この4大原料の他に使われる原料は「副原料」といわれています。日本では酒税法によりビールに使える副原料を以下のように定め、これ以外の原料を使うとそれは「ビール」ではなく「発泡酒」とされています。
※これらが入ると「発泡酒」
「副原料」以外の様々な原料が、味や香り、色に豊かな特徴を与え、ユニークなビールづくりに多用されています。日本ではそれらを使うと、ビールに見えても「発泡酒」になります。
ビールの保存方法
高温の場所に置かない
もっとも注意するのが温度です。ビールは温度にデリケートな飲み物なので、高温の場所に置いておくと風味が損なわれてしまいます。また、直射日光も大敵です。強い光はホップ由来の成分を変化させ、「日光臭」と呼ばれる不快な臭いを生じさせます。
ビールを保管する際には、最低限陽の当たらない涼しい場所に置いておくことが重要です。
冷蔵庫は向かない
ビールの冷やしすぎにも注意しましょう。冷やしすぎてしまうと、たんぱく質が凝固して風味が損なわれることがあるので、冷蔵庫で保存する場合は冷気が直接当たらない場所や野菜室を選びましょう。ビールの種類によっては要冷蔵のものもあるので、保存方法を確認しましょう。さらに、ビールは温度だけでなく振動によっても風味が変わってしまうので、冷蔵庫の開閉による振動を与えないためにも、扉側ではなく、安定した場所に置くことがおすすめです。
三菱食品株式会社:たのしいお酒.jp
株式会社ココラブル:ビール女子 より